最新の製造設備でPCBに基準マークを配置する必要はあるか
設計における基準マークの配置忘れは、ある種の「ホラー」です。
10年前、筆者はホラー映画鑑賞をやめました。若いときは単純に恐怖感を心から楽しみましたが、技術者としてのキャリアを開始するとともに、興味はアクションやSFに移りました。これはおそらく、仕事上の単純なミスが製造後の悲惨な悪夢につながったホラーストーリーを相応に経験していたからだと思います。
筆者が電子機器設計の仕事を始めた頃、スルーホールコンポーネントが非常に一般的で、表面実装コンポーネントを目にすることはめったにありませんでした。マイクロコントローラー(MCU)のQFP(Quad Flat Package)が一般的になると、古いプラスチック リードチップキャリア(PLCC)のフットプリントから移行せざるをえませんでした。これは、QFPがPCBに直接実装できる一方、PLCCは追加ソケットを必要としたためです。チップ製造業者が、QFPや類似のパッケージを支持し、PLCCパッケージのMCUの製造を中止するのはもう時間の問題だと思いました。
PCB実装業者から、200枚の生産用基板のMCUを実装できないとの電子メールを受け取ったときに、悪夢が始まりました。スルーホール コンポーネントであるPLCCソケットに慣れていたため、筆者はPCBに基準マークを配置することに思い至りませんでした。基準マークを配置しないということは、狭いピッチでQFPにパッケージされたMCUを全て手作業で実装しなければならないことを意味しました。
その結果、かなりの割合の基板が不良品となり、不完全な手作業によるはんだ付けの欠陥を修正するためにとてつもない時間を費やすことになりました。それ以来、業者から、基準マークなしでも製造できる機械にアップグレードしたとの連絡を受けていても、筆者は設計に必ず基準マークを使用するようにしています。
基準マークを省略すると、ひどい基板ができあがる可能性があります。
基準マークの概要とその製造時の役割
PCB設計において、基準マークはpick and place実装機の基準点として機能する、円形の銅箔です。実装機は、基準マークを使って、QFP(Quad Flat Package)、BGA(Ball Grid Arrays)、QFN(Quad Flat No-Lead)などのピッチが狭いパッケージのPCBおよび表面実装コンポーネントの向きを認識します。
PCB設計で一般的な基準マークには、グローバル基準マークとローカル基準マークの2種類があります。グローバル基準マークは、PCBの端に配置される銅箔の基準点です。これにより、実装機は、基板のX-Y軸の向きを判別することができます。また、この基準マークを使って、PCBの固定時にねじれを補正します。
ローカル基準マークは、quadパッケージの表面実装コンポーネントの角の外側に配置される銅箔のマークです。実装機は、これを使って正確にコンポーネントのフットプリントを配置し、コンポーネントの配置エラーを軽減します。これは、デザインに、ピッチが細かく、大きなquadパッケージに組み込まれたコンポーネントがある場合、特に重要です。
基準マークの要件を必ず製造業者に確認します。
最新の製造技術で基準マークは必要か
筆者は、必ずグローバル基準マークとローカル基準マークの両方を使ってPCBを設計してきました。しかしながら、ローカル基準マークの省略の可能性を記述した記事に出会い、興味を持ちました。より小型のPCBから基準マークを取り除くことで、信号トレース用のスペースを最大にするのは、理にかなっていました。
製造技術が発展した結果、今では、ローカル基準マークは特定条件下で省略できます。より小さい基板では、最新の実装機はグローバル基準マークのみを使用してSMTコンポーネントを配置できます。基準マークは、より広いピッチのコンポーネントの場合も省略できます。例えば、ピッチが1.0mm以上の表面実装コンポーネントは、最新マシンで正確に配置できます。
そうはいっても、デザインからローカル基準マークを取り除く前に、製造業者の機械の性能レベルを検討することは重要です。全ての業者が、最新技術によって強化された機械を備えているわけではないことは分っています。その一方で、グローバル基準マークは、最も進んだ製造設備を使って作業しているとしても、決して設計から取り除くべきではありません。
PCB設計における基準マーク使用のベストプラクティス
実装機を最大限に活用するには、基準マークを適切に配置する必要があります。デザインに基準マークを配置することになった場合、いくつかの重要なガイドラインがあります。
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基準マークは、穴の開いていない円形の銅箔層を配置して作成します。基準マークは、ソルダ―マスクが塗布されていない必要があります。
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基準マークの最適サイズは、1mmから3mmの間にしてください。マークの直径と同じサイズのクリアランス領域が維持されていなければなりません。
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グローバル基準マークの場合は、3つのマークをできる限り正確に基板の端に配置します。十分なスペースがない場合は、最低1つのグローバル基準マークが必要です。
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基準マークは、マークのクリアランス領域を除き、基板の端に対して0.3inchの距離を保つ必要があります。
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ローカル基準マークの場合は、表面実装コンポーネントの外側の端に、対角線上に最低2つ配置します。
アルティウムのCircuitStudioのようなプロフェッショナル向けのPCB設計ソフトウェアを使用すると、パッドを挿入してパッドサイズをゼロに変更し、適切な直径値を設定することで、基準マークを配置できます。
基準マークの配置についてさらにヒントをご希望の場合は、アルティウムのエキスパートにお問い合わせください。